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【A-PEN68開発の記録】第10話 ~開発の深化と内部構造の革新~

  • 執筆者の写真: R.Nakanishi
    R.Nakanishi
  • 1 日前
  • 読了時間: 9分
内部構造を徹底的に作り込んだA-PEN68
内部構造を徹底的に作り込んだA-PEN68

■ A-PEN65からA-PEN68へ ― 構造の再設計

A-PEN68。実際、このモデルはA-PEN65から68へとサイズアップした段階で、構造そのものを根本から見直したルアーになっています。比較対象としてわかりやすいのが、オリジナルのA-PEN90A-PEN68はその使用感のDNAをしっかり継承し、内部構造をシンプルに効率的に再設計しています。


■ なぜシンプルにするのか ― 浮力という本質

なぜここまでシンプルにしたのか。それは、「空気容量を最大化することが、浮力性能を上げる最短の方法」だからです。ボディ内部に構造物を増やせば増やすほど、その分だけ空気室は狭くなり、浮力は下がる。これはルアー設計における基本であり、どうしても避けて通れない物理的な制約です。だからこそA-PEN68では、内部構造をできるだけ削ぎ落とし、【空気とウェイトだけに近い構成】に持っていきました。

A-PEN68の内部構造は目的に対して不要な構造を排除した結果、シンプルになっている
A-PEN68の内部構造は目的に対して不要な構造を排除した結果、シンプルになっている

■ これまでの設計との違い ― 浮力と重心への再アプローチ

今までの多くのルアー設計では、「どれだけ重たいウェイトを詰め込めるか」という点にフォーカスされがちでした。ただ、それだけでは本来重要な【浮力と重心の関係】という核心には、なかなか踏み込みきれていなかったんじゃないかと感じています。

これは以前のゼルファス開発の記録|第2話でも触れた通り、肉厚や内部構造はすべて空気容量=浮力に直結しています。その意味でも、A-PEN68は必要最低限の構造以外を排除した設計になっています。

テスト段階では微細な設定違いで、様々なタックルセッティングで徹底的にテストを行った
テスト段階では微細な設定違いで、様々なタックルセッティングで徹底的にテストを行った

A-PEN68の内部構造 ―空気量を削らないという思想

この開発において、僕の中で意識していたのは「空気量を削らない」という考え方です。そのため、細部の構造にも徹底的にこだわりました。具体的には、以下のような構造を採用しています。

・前方のラトルルームを確保するための最低限の壁 

・水の侵入防止と強度確保のためのエイト環周り 

・腹部フックアイにはΩ形状を採用し空気容量を確保 

・ワンノックサウンドの移動レールは必要最低限のみ設置 

・メインウェイトの固定はピン状のパーツで構成し空気容量を確保

すべては一貫して、空気量を削らず確保するための設計です。主なところをピックアップして見ます。


最小限の構造でメインウエイトを固定する
最小限の構造でメインウエイトを固定する

■ メインウェイト固定構造の革新

通常であれば、メインウェイト(テール側)は壁で囲って固定する構造を取ります。しかしA-PEN68では、その構造すら排除しました。採用したのはピンで固定する構造です。これによって内部空気容量を最大限確保しています。


内部構造を極力無くし空気量を増やすためフロントフックはΩ形状ワイヤーを採用
内部構造を極力無くし空気量を増やすためフロントフックはΩ形状ワイヤーを採用

■ フロントフックアイの工夫

さらにフロントフックアイにも工夫を入れています。一般的にはエイト環を採用しますが、A-PEN68ではそれを使わず、Ω形状ワイヤーを採用しています。これによってフック周辺の内部にも、さらに空気容量を確保することができました。


■ 完成したバランス

これらの細部の積み重ねによって

・高浮力ボディ

・内蔵ウエイトの増強

を実現し、空気量だけでなくボディ全体の比重バランスとして浮力を設計し、レスポンスの良い操作感 と安定した飛行姿勢を両立。「飛ぶのに沈みすぎない」という理想的なバランスを作り上げることができました。


キャストしやすい重量を確保しつつもレスポンスの良い操作性を維持できたA-PEN68
キャストしやすい重量を確保しつつもレスポンスの良い操作性を維持できたA-PEN68

■ 高浮力ボディが生むフィーリング ― バルサルアー的挙動

この設計によって、通常の内部構造よりも高い浮力を確保することができました。結果として、同じ総重量であっても軽いボディに重たいウェイトを仕込めるという状態が作れるようになっています。これによって得られるフィーリングは、いわゆるバルサ製ペンシルベイトに近いレスポンスの良い操作性です。


■ バルサフィール × ワンノックA-PENサウンド

このサイズ感において軽快なレスポンス、そしてABSでしか出せない強いワンノックサウンドを両立させるにはバルサルアーのような高浮力設定が必要だったんです。そしてバルサでは出せない、ABSボディ構造ならではの“カンッ”という明瞭で響くワンノックサウンド。内部構造・設計思想を見つめ直すことで、68mmというコンパクトなボディに双方の性能を詰め込むことができたんです。

同じ形状・総重量でも軽いボディに重たいウエイトを入れたもの・重たいボディに軽いウエイト入れたものでは全く別物のルアーになる。ウッドルアーの比重の違いは、それを如実に示してくれる
同じ形状・総重量でも軽いボディに重たいウエイトを入れたもの・重たいボディに軽いウエイト入れたものでは全く別物のルアーになる。ウッドルアーの比重の違いは、それを如実に示してくれる

■ 高比重ハードウッドとの対比 ― 目指した方向性

もちろん、バルサとは対象的な高比重ハードウッド製ペンシルには、それ独自の良さがあります。

・ボディ自体に重量がある

・水押しが強い

・ロングスケーティング設定が出しやすい

これは非常に魅力的な要素です。オリジナルのA-PEN90は、どちらかといえばこちらの高比重ハードウッドプラグに近い設定で仕上げています。A-PEN開発秘話~episode 3~


それに対して、今回A-PEN68で目指したのは、その対極にある内部構造でした。

・ボディは軽い

・浮力が高い

・操作に対してリニアに反応する

つまり、バルサボディのような軽快なレスポンスです。

ボディはダウンサイズさせながら操作感を維持しようとすれば、全く同じ設定、設計思想では無理が出てくる。もし仮にA-PEN90と同じ設計思想を、そのまま68のサイズに詰め込めば、それはそれで良いルアーにはなったと思いますが、全く別の操作感・アクションレスポンスに仕上がり、A-PEN90とは別の操作感を持った小さなペンシルベイトに仕上がっていたと思います。操作感を維持したたままダウンサイズするには、目的とする操作感に合わせて設計思想を最適化する必要があったんです。

その意味でA-PEN68は、単なるサイズ違いではありません。A-PEN90の遺伝子を継ぎながら再構築した、“バルサボディのフィーリング+ABSボディ構造の融合体”とも言える存在なんです。

A-PEN90は怪魚対応ということもありボディの強度アップを図りつつ高比重ウッドルアーのような水押を出すために、あえて内部構造を増やして設計している。
A-PEN90は怪魚対応ということもありボディの強度アップを図りつつ高比重ウッドルアーのような水押を出すために、あえて内部構造を増やして設計している。

■ 残した余白 ― セッティングに残した“最後の設計意図”

ここは今回のA-PEN68を語るうえで、かなり重要な部分です。最終的にこのルアーの設計を仕上げていく段階で、トップバトラーさん、フラッグシップさん、TK拓哉さんそして開発のきっかけをいただいて最後まで協力してくださったノースウェーブの北方さん

そういったメインで関わっていただいた方々と、何度も意見交換とテストを繰り返しながら、最終のウェイトバランスを詰めていきました。本当に最後は、0.1g足すか足さないかこのレベルの話になっていきます。浮き姿勢もそうですね。ほんのわずかな違いで変わってくる領域です。

悩みに悩んだ最終セッティング。
悩みに悩んだ最終セッティング。

■ フィールドごとに存在する“最適解”

その中で改めてはっきりしたのが、フィールドごとに最適なセッティングが違うということでした。

例えば――

・僕がバス釣りで、よく行くリザーバーのオカッパリ

・琵琶湖のボートのバス釣り 

・淀川・武庫川でのチニングトップ

・関西各地のチニング

同じ魚でも、フィールドが変われば求められるセッティングが微妙に変わる。この違いは、実際に複数人でテストしていく中で、かなり明確に見えてきた部分でした。


■ 0.1gの世界での最終判断

じゃあ、その中で最終的にどこに合わせるのか。これは本当に難しい判断で、最後は0.1g単位の世界になってきます。

ここで僕が出した答えは、「一つの正解に寄せきらない」という選択でした。

なぜなら、僕自身全てのシチュエーションで釣りをするからです。

何か一つに寄せ切ると他の全てで使いにくいものになってしまう。だから製品版には余白を設けておくことにしたんです。


■ “余白”という設計思想

どういうことかというと、それぞれのフィールドの中間的なバランスを取りつつ、使うアングラー自身が最終調整できる余白を残すという考え方です。具体的には、0.1~0.5gほどのウェイトシールなどを貼ることで自分のフィールドに最適化できる余地を残した状態で製品化しています。

左が初期設定の#8フック・右が付属の#6フックを付けた状態。いずれもういとチューニングが可能な余白を残している。
左が初期設定の#8フック・右が付属の#6フックを付けた状態。いずれもういとチューニングが可能な余白を残している。

■ すでに高次元で成立した基本性能

もちろん前提として、A-PEN68はここまでお話ししてきた通り、内部構造を極限まで切り詰めて、

・高浮力

・重心集中

・クイックレスポンス

・ワンノックサウンド

このあたりは、すでに高いレベルで成立しています。

その上で、さらに――

“あと少し”を触れる余白を残している、ということです。


■ チューニングできる余白を残した最終設計

このルアーは、0.1~0.5gといったウェイトシールを追加しても、まだ破綻しないような浮力設定にしてあります。

つまり、

・もう少し潜らせたい 

・もう少し飛距離を伸ばしたい

そういった要望に対して、あとからチューニングできる設計になっています。


■ ラインセッティングによる変化

さらに言うと、このサイズ感のルアーは、ラインセッティングの影響もかなり受けます。

例えば――

・PE+フロロリーダー

・リーダーの長さ(1ヒロ、2ヒロ、3ヒロ)

・PE直結

・ナイロン

・フルフロロ

これだけでも、

・アクションの出方 

・ポーズからのアクション

・ダイブの入り方

など、かなり変わってきます。その中でも僕がメインでテストしてきた基準となるラインセッティングは、ナイロン12lbPE0.8+ナイロン14lbロングリーダーです。ですがあえて設定に余白を残すことでこれらライン設定の変化にも柔軟に対応できる幅を持たせているんです。

様々なタックルセッティングに対応できる余白を残して完成させたA-PEN68
様々なタックルセッティングに対応できる余白を残して完成させたA-PEN68

■ 最後は“使い手の領域”

だからこそ、A-PEN68これ以上いじることは出来ないという固定セッティングにはしていません。あえて、“余白”を残しているというイメージです。

その余白を使って、

・もう少し飛ばしたい

・もう少しダイブさせたい

・自分のフィールドに合わせたい

そういう微調整を、皆さん自身のフィールド・タックルで調整して自分だけのA-PEN68に仕上げてもらいたいと思っています。

 

この浮力に対する設計思想は、今後のADUSTAルアー開発における大きな軸の一つになっていくと感じています。

次の第11話では、この設計を完成させて最終サンプルを引っ提げて敢行した・フィールド実釣テストによる最終検証(関西バス編)を紹介していきたいと思います。


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