ネオリーン開発秘話~episode 3~ 試作とテスト「“あの音”を水面に残す─理想を追い続けた開発の記録。」
- R.Nakanishi
- 4月22日
- 読了時間: 6分
更新日:4月30日
前回の記事では、「ネオリーン」に込められた性能の核心と内部構造の秘密についてご紹介しました。今回はそこから一歩踏み込み、試作・実釣テストの過程でどのように改良が施され、ネオリーンが最終形へと研ぎ澄まされていったのか。その舞台裏に迫ります。
原型となった2つの“幻”

ネオリーンの開発は、私自身が過去に手掛けた2つのルアーからインスピレーションを得るところから始まりました。

ひとつは、ブラジル・アマゾンのピーコックバスを想定して試作された「Chugbait(チャグベイト)」。ドッグウォークとチャガーサウンドを状況に応じて使い分けられるよう、ダブルラインアイという構造を備えた意欲作でした。しかし量産には至らず、幻のプロトとして一部のスタッフの記憶にだけ残る存在となっていました。

そしてもう一方が、私が以前VAGABONDにて制作したハンドメイドポッパー「Endline(エンドリーン)」。こちらは日本のラージマウスバスをターゲットとし、リアルな造形と高いキャスタビリティ、独自の操作感を融合させたモデルです。
この2つの特性を掛け合わせることで、“新しい世代のポッパー”としてのネオリーンが生まれる土台ができあがりました。
アクションの核心は「バランス」にあり
1. 形状設計の試行錯誤
ポッパーの魅力を決定づけるのは、なんと言ってもサウンドの質とアクション。そのためには、ボディ形状の微細な違いも極めて重要です。
試作段階では、実に多様なバリエーションを試しました。

顎を前方に突き出したタイプ → 潜りすぎてしまい、アクションバランスが崩れる。

ヘッド部を大きくしたタイプ → 狙っていたチャガー音が変質し、不採用に。

カップの形状 → 縦長・横広・浅型・深型・切角などを検証し、最終的には二重構造カップに落ち着きました。

以前から注目していたのは、「形状 × 浮水姿勢」の関係です。浮く角度や水面との接地深度は、アクション時の空気の巻き込み量やサウンドの発生に直結します。そのため、形状だけを見て「このデザイン・形状だからこの音」とは一概に言えず、サウンドの再現性には形状と浮姿勢の絶妙なバランスを追い込む必要がありました。
ポッパーに関しては、かなり以前より自身の中で釣れる音に対するこだわりがあり、研究し続けてきた部分でもあります。

低く水中に響くいわゆるチャガーサウンドは、ロングポーズとの組み合わせが、とりわけ良いサイズのバスを引き寄せバイトに持ち込む能力を持っていることを経験してきたこともあり、その経験が今回の設計に大きく関わっています。

また、それとは違い、ポッパーによる水押ドッグウォークアクション中に発生する甘いポップサウンドが大小問わずバスをトップウォーターに引き出す力があることも幾度となく経験してきて釣れる音の一つとして認識しています。

だからこそ、ネオリーンではチャガーサウンドに加えて、ドッグウォーク中にも「キュポッ」と甘いポップ音が発生する設定を追求。まさに“バスを水面に誘い出す道具”として仕上げることを目指していました。
2. ウェイトの微調整と飛行安定性の確保

次なる課題はウェイトの調整。ネオリーンの内部バランスは、0.1g単位での緻密な調整を続けました。試作の初期段階で明らかになったのは、僅かなウェイト配置の違いで飛行姿勢が変化し飛距離が激変するという事実。重すぎると飛距離は伸びるがアクションに影響し、軽すぎると飛行姿勢が不安定になり飛距離が犠牲になる——このバランスの最適解を探る日々が続きました。
求めたのは、飛行姿勢・飛距離・アクションレスポンスの全てを高次元で両立させる絶妙な“前後のウエイトバランス”。人の気配を消せるディスタンスでピンスポットへアプローチし、水面直下ギリギリを、しっかりと水を押しつつポップサウンドでバイトを誘う。

そんな理想を追い求めて、ウェイトバランスを何通りも作り変え、実釣を繰り返しました。
そして最終的に、現行モデルに至るセッティングが完成。ネオリーンは「飛び」「サウンド」「動き」の三拍子が揃った、ポッパーとして完成形へと昇華させることができたのです。
実釣テストが語る信頼性

プロトタイプ完成後、テストフィールドとして選んだのは近畿地方を代表するリザーバー、高山ダムと室生ダム。どちらもアングラーにはおなじみながら、簡単には答えを返してくれないフィールドです。それでもネオリーンは、厳しいタイミングのなかで複数のバスをキャッチ。特に効果的だったのは、以下の基本的な2つのアプローチでした。

スローなポッピングによる誘い → 着水後、波紋が消えるのを待ってから、ポップサウンドを大きく鳴らして止める。ポーズ。小さく鳴らして止める。ポーズ。の繰り返し。最も基本的なポッパーのアクションではあるものの、水面に残る“気配”が、ナーバスな魚にもスイッチを入れる。

連続ドッグウォーク中の音と水押しによるアプローチ → ラインスラッグを活用しながら水を押すようにドッグウォーク。時折交じるキュポっという甘いポップサウンドがトリガーになりバイトを誘発させる。

いずれのアクションでもネオリーンの「浮水姿勢」「サウンドの質」「ドッグウォークのレスポンス」が大きな武器となり、ルアーとしての信頼感を裏付ける釣果に結びついていきました。
締めくくりに:試作とテストが証明した“ネオリーンの実力”
ネオリーンは、過去の試作モデルが持っていた“可能性”を現在の技術と感性で昇華させたポッパーです。
それは1/10ミリ単位の形状修正、0.1g単位のウェイト調整、それらを幾度もフィールドで検証しながら、アングラーが信頼できる存在を目指して開発してきた結果です。
次回は、**第4回「製品化への道 – 量産精度の追求とビジュアルへのこだわり」**をお届けします。どうぞご期待ください。
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