top of page
検索
  • 執筆者の写真R.Nakanishi

性能にこだわったメタルバイブ【TIVVY】開発秘話

ADUSTAのルアーデザイナー中西です。

このブログでは開発ストーリーやコンセプト・チューニングなど、今まであまり明かしていない部分をお伝えしたいと思う。

今回はADUSTAのメタルバイブTIVVY。今まであまり語ることがなかったが、このTIVVYも、かなりのこだわりを持って創り上げたルアーになっている。

ADUSTAメタルバイブTIVVY
極寒期はもちろん、オールシーズン活躍のADUSTAメタルバイブTIVVY

初期TIVVYは中国釣具市場からのリクエストと、オーストラリアなど海外のブリームフィッシングを主眼に企画が始まった。

当初様々な名作メタルバイブを研究対象として使用しまくった結果、TIVVYのコンセプトとして、【ボトム付近でのリフトアンドフォールがスムーズに行えること】【巻き始めのアクションレスポンスが良いこと】を目標に掲げウエイトバランスを出して行こうと考えた。また、ハイプレッシャーの中でも釣り勝つために、重量のわりに小ぶりのシルエットに纏めたいと言う思いも練り込み、ざっくりしたハンドメイドサンプルを製作した。求める性能が出せるように、サンプルに鉛ウエイトシールを微妙につけたり削ったりを繰り返し、基本形状を詰めていく。


ADUSTAメタルバイブTIVVYの初期サンプル
初期ハンドメイドサンプルのTIVVY。この頃は真鍮プレートでテストしていた。

初期TIVVYのハンドメイド試作品は、メタルバイブでは一般的な真鍮プレートを多用していた。しかし、より低重心化を求めて素材を色々と検証。テスト段階ではカーボンプレートなども試してみたが、コスト的な問題もあって不採用となった。最終的には中国ディーラーからのリクエストもありチタンプレートを採用することになる。単にチタンプレートと言っても数種類存在し、同じチタンでも強度や硬さなどが異なるのだが、この種類の多さが後になってトラブルを起こすことになるとは、想像もしていなかった。。。


ADUSTAメタルバイブレーションTIVVYのサンプル
プレート素材は様々試作した。左は真鍮・右はカーボン。

TIVVYはルアーとしてのシルエットも大切にしたかったので、ウエイトバランスのテストをした基本形状の設定寸法を元に通常のバイブレーション形状で原型を製作。そこからメタルバイブとして必要なパーツごとに切り分け、細部ウエイト設計に進んでいった。


ADUSTAメタルバイブレーションTIVVYのサンプル
ウエイトバランス調整結果を踏まえてデザインしたTIVVYの原型

ボトム付近でのリフトアンドフォールがスムーズに行えるようにするためには、フォールが可能な限り真っ直ぐ落ちないと行けない。スパイラルフォール気味になりすぎるとライン絡みが酷くなるからである。

多くのメタルバイブはその部分の設定が十分にできていないように感じた。そのため、TIVVYは可能な限り低重心、一定方向へストンと落ちてゆくバランスを突き詰めてヘッド部分の重量バランスを調整。僅かにお腹へ向かって膨らむ断面形状を作り出している。背中側に比重の重い鉛が集中するとたちまちスパイラルフォールしてしまうためだ。

リフトアンドフォールや、着底からの巻き始め時のフック絡みを最小限に抑えるため、フロントフックの可動範囲を鉛ボディ形状で拘束。削った分ボディバランスも微妙に変化するので、再度ウエイト配置を変更。

同時にラインアイ位置もかなり時間をかけて微調整を行っていった。ラインアイの位置というのは、どのルアーにおいてもアクションを決定づける非常に重要なパーツ・位置なのである。これが少しズレただけでも全く違うアクションのルアーに仕上がってしまう。

特にTIVVYは【アクションレスポンスが良い】こともコンセプトにしていたため、かなりの時間を費やしてセッティングしていった。

メタルバイブの場合、ラインアイの位置の調整は長手方向のX軸移動、お腹を下、背中を上としたY軸方向の移動で調整することになる。

これがまた、無限のセッティングがあるため他社との比較において使用感を検証し、差を体感できる位置を出すというのがかなり苦労する。わずか0.5mmずらすだけで使用感が変わってしまうのである。

今のTIVVYのラインアイのセッティング位置は、基本が真ん中の穴、オールラウンドに使用できるアイ。前がファストリトリーブ重視。一番後ろがスローリトリーブ・浮き上がり重視の設定としている。


ADUSTAメタルバイブレーションTIVVYのサンプル
ラインアイの位置はルアーにとって命同然。TIVVYもかなりのテストを繰り返した。

ここまで来てようやく製品版に近づいてくるのだが、実際に釣りで使うのだから、ボディ部分の強度ももちろん重要。市販メタルバイブの一部製品では、普通に使っているだけでプレートとボディの接合部分が曲がってきて、まっすぐ動かなくなる商品も存在した。

TIVVYを作る上でこのような強度不足だけは可能な限りなくしたい。その思いから、チタンプレートのボディ内部形状にも強度確保の設計を取り入れた。

鉛ボディとプレートがガッツリ結合されるように、プレートには各所切り込みと穴あけ加工を施している。その様相はエンジンのメタルガスケットを彷彿とさせる仕上がりになっている。下記写真のように、ほぼ全体に骨格のごとくチタンプレートが入っており、ボトムとの激しいコンタクトで鉛ボディは凹んでも、プレートが歪みにくい設計で、致命的な破壊が起こりにくくルアーとしての性能を維持し続けられる。


ADUSTAメタルバイブレーションTIVVYのプレートサンプル
鉛部分とプレート部分を強力に接合整形するプレート形状。まるでメタルガスケットのような仕上がりになった。

最初期に採用し散々テストしてきたチタンプレート素材は強度・アクション共に良く、順調に事も運んで量産に取り掛かることになった。

しかしここでトラブルが起こった。

中国生産の悪いところで量産段階になって何故かチタン素材が変更されており、強度が弱いチタンプレートを採用された量産用確認サンプルが送られて来たのだった。最終テストを行った際にその事実に気づき、量産直前の工程で急遽ストップを掛けた。

ここからが予想外の苦労の始まりだった。

手元にある様々な名作メタルバイブと強度検証テストをすることになったのだ。それを行わなければならないほど、チタン素材の僅かな違いで強度が異なったのだ。

まずは、市販製品の素材が何でできているのかを探るため、塗装をはぐところからスタート。素材を確認したら、いざ強度テスト。10投毎にプレート部分に変化がないか観察する。各所観察していると変化が顕著に現れるのがラインアイ・スナップとの接点であることがわかってきた。バイブレーションというジャンルが故に最も摩耗する部分である。

そこで、名作メタルバイブたちは何投で変化が現れ、何投で変化が緩やかになっていくのか?摩耗率的なものを求めることにした。

すると殆どが20投ほどで形状に摩耗痕が現れ始め、約60投前後まで激しく変化し、その後は緩やかに摩耗してゆくということがわかってきた。

ADUSTAメタルバイブレーションTIVVYのテスト報告書
メタルプレート強度検証テスト報告書の一部。普段の釣りとは違い、変な箇所が筋肉痛になった。

この結果を踏まえ、TIVVYに採用する数種のチタンプレートをテストした。最も摩耗が激しくなるように流れのある河川をテストフィールドに選び全力で超遠投。EXハイギアでファストリトリーブし1時間に60投ほどを目処にキャストを繰り返し、既存品や初期サンプルとの摩耗状況を確認していった。この【筋トレ研究作業】をサンプルを作った数量分、ひたすら繰り返し、最も強度が確保できたチタン素材を特定することが出来た。無事製品として申し分ない強度を確保したチタンプレートを採用し量産に進めることが出来たのである。


ADUSTAメタルバイブレーションTIVVYのサンプル
複数のチタンプレート素材で作成したTIVVYのサンプル

そんなこんなで、苦節2年強の歳月をかけ、求めるアクションと強度・使用感を得られ、量産に向けて再び工程を進行。中国専売カラーなども含め十数色のカラーサンプルを製作していった。日本では未発売のカラーも多数出たが、無事各国に発売されていくことになったのである。


ADUSTAメタルバイブレーションTIVVYのサンプル
初期カラーサンプルの一部。この中から販売カラーが選定される。

今まで明かしてこなかった裏話的な部分だが、このチタンプレートで一箇所、製品出荷状態では使用していない穴を開けているのだが、どれかおわかりだろうか?

答えはリアフックの後ろにある穴。


ADUSTA メタルバブ TIVVY リアフックのチューニング
リアフックの後ろにある穴はシングルフックチューニング用。

これは、オーストラリアで主流のブリーム(チヌ)フィッシングチューン用で開けてある穴で、オーストラリアでは、前後のフックを取って、この一番うしろのアイにジグなどで使用するシングルフックを2つ付けて使用しているのである。

TIVVYは日本での発売開始から既に2年。日本各地のバスフィールドでも好調のお話をいただき冬の極寒時期はもちろん、全シーズン通してボトム付近でのリアクション、ファストリトリーブによるサーチなどオールラウンドに使用していただけるメタルバイブに仕上がっているので、皆さんのフィールドでも一度試していただけると良い釣果を引き出してくれると思う。


閲覧数:333回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page