top of page
写真 2023-09-22 13 53 07 (1)_edited.jpg

The story of a lure designer

人生をルアー創りに懸けた男。ADUSTAルアーデザイナーR.Nakanishi

fishing_origin.jpg

終わりのない遊びとの出会い

家から歩いて5分でダム湖、10分で清流という釣りにはもってこいの環境に生まれ、幼少期から祖父にオイカワなどの雑魚釣りに連れて行ってもらっていたように記憶している。それが釣りという遊びと魚という存在を身近にした理由だったのだろうと思う。

小学校2年生の頃に友達から【学校の横のダムでブラックバスっていうのが釣れるらしいけど、ルアー釣りしてみいへん?】という話に誘われて、手持ちの投げ竿とスピナー・スプーンにジグヘッド付きの蛍光色系の2インチぐらいのクラッピーグラブを持ってバス釣りに行き始めたのがルアーというものを知るキッカケだった。

​憧れのルアーが欲しかったあの頃

高校1年。そもそも画家志望だったがその道に挫折し、何をしようか?呆然とこれからについて考えていた。そんな中、最初の運命的な出会いが巡っきた。

たまたま隣の席になった人物に【本当のバスフィッシング】を教えてもらうことになり、バズベイトで釣れた48cm一匹がきっかけで本格的にバスフィッシングにのめり込んだ。それが生涯の親友との出会いとなった。

ちょうど1994年頃、第2次バスブーム真っ只中。そもそも人気で手に入れられなかった有名ブランドのよく釣れるルアーたち。なんとか手に入れたいと足繁く釣具屋に通うも中々手に入れられない日々。

そんな中、親友からルアーは木で作れる事、それをハンドメイドルアーと呼ぶ事を教えてもらった。

もともと美術・工作には自信があった。【手に入らないなら自分で作るしかない】と心に決め、当時のルアー専門雑誌で紹介されていたルアーの構造や設計に関わる記事を、何度も何度も読み漁り独学でルアー制作を学んだ。今のようにメディアが多くなかった時代、奈良の山奥の片田舎でルアーを勉強するには、これしか方法がなかった。雑誌の記事や写真を見て、想像と妄想を元に見様見真似で廃材からボディを削り出し、ポスターカラーで色を塗って一液ウレタンでドブ漬けコーティングする。完成させては実釣テスト。魚に答えを聞く終わりのない遊び。そんなことを繰り返し続けていく中で、【憧れのルアーを自分で再現する】という思いは、いつしか【自分なりに楽しいと感じる釣りをするためにルアーを作る】という感覚に変化していった。

_89A2231.jpg
_89A0827.jpg

創り続ける道へ

1998年の年末。釣具業界にルアーメイキング・デザイナーで就職するために必死でルアーを作っていた。
フィールドで知り合った釣り仲間に【ルアーの製作スタッフを募集しているルアーブランドが有る。】そう教えてもらったのがキッカケだった。
自分の作品を持って面接を受けるべく、それまで行ってきたルアー製作の知識とノウハウを凝縮させ、当時流行っていたトラッド系のペンシルベイトを製作する事に決めた。働き始めたばかりの安月給を、なんとか工面して小さな木工旋盤を買い、滑らかにスケーティングする絶妙な形状を削り出し、素材の比重を踏まえてウエイトセッティング。憧れだったオリンポスのエアーブラシも揃えて、最大限深みのあるカラー表現に努め、失敗を乗り越えてなんとか作り上げた数個のルアーを持って、そのルアーブランドの扉をたたいた。
しかし面接では2度断られ、それでも【次こそ最後】と思って力の限りを尽くして製作したルアーを持って挑んだ3回目の面接でOKをいただき、ルアーを作るということを生業にするスタート地点に立つことができた。

運命的な出会い

釣具業界に就職して幾ばくも経たないうちに僕のルアー制作の方向性を決定づける運命的な出会いが2度訪れた。
1つ目がネイティブ・カトウクラフト、加藤さんとの出会い。それまでトラディショナルなルアーをメインで創っていた僕に、リアル系ルアー製作の考え方、アルミの貼り方、カラーリングの基礎を教えていただいた偉大な大先輩。
2つ目がニシネルアーワークスの西根さん。1999年当時【ドリームラッシュ】のブランド名でウッドハンドメイドルアーを製作しておられた西根さんがカナダから帰国され工房に訪ねて来られた。ウッドルアー制作について様々お話しをお伺いした後、帰り際に【何か削りますよ、何にしますか?】と工房に置いていた檜の木片を手に取って聞いてこられた。昔から馴染みのある魚【オイカワ】をリクエストすると、数分の間に木片は生命感を宿した綺麗な曲線を持つルアーに変化していった。見た目だけではなく、しっかりとルアーとして機能する形状を織り込まれたその木片。その一瞬の出来事に僕は魅了され、それまでトラディショナルなスタイルメインで製作していた僕を、一気にリアルフィニッシュを追求する方向へと振り向かせた衝撃的な瞬間だった。

_89A1597.jpg
adusta_lure_design_edited_edited.png

釣りをする【道具】の探求

ルアー製作で大切にしているのは【ルアーは魚を釣る道具であること】そして【性能と造形の融合】。
ルアーはあくまで【釣道具】であって、実践に使えて釣れてこそ初めて【ルアー】という【道具】として存在意義があると考えている。そして設計の最終段階として造形・装飾を施していく。ルアーの見た目は、【これ、釣れるかも】【これで釣ってみたい】というアングラーの【投げ続ける・使い続ける】心理的モチベーションにも深く関わっている部分だと思っている。
【魚を釣る】ということだけにフォーカスすれば、無駄の境地とも言えるこの装飾は、ルアーフィッシングだからこそ詰め込める遊び心の一つでもある。
本当に【魚を釣りたい・獲りたい】だけなら、ルアーなど使わず餌や仕掛けを使用すれば効率よく魚を獲る事ができる。ではなぜ僕たちはルアーで魚を釣るという事を選ぶのだろうか?そこには、【ルアーで魚と知恵比べをする楽しみ】【ルアーをキャストする楽しみ】【タックルを愛でる楽しみ】があるからではないだろうか?
ゲームを思考するための釣道具としての【性能】と、投げ続ける事ができ、道具として愛でる事ができる【造形・装飾】の融合こそがADUSTAの体現するルアーだと考えている。
詳しくはブログでも紹介

導いてくれた魚たち

大きな魚を釣ったこともあれば、楽しい魚との思い出、釣り上げた瞬間の感動は数え切れないほどある。
だが特に心に残るのは、バラしたり、ラインブレイクしたりフッキングできなかったりといった悔しい経験。
それらは他の思い出とは異なりなぜか鮮烈に脳裏に焼き付き、似たような釣り場に立つと昨日のことのように蘇ってくる。
中でも高校生の頃、高山ダムのバックウォーターでZealアンカニーチャップ5/8ozを使って掛けた魚とのファイトの瞬間が今でも心に深く刻まれている。
未だに追い求めているあの魚。狙い通りの流し方で吸い込むようなバイトを引き出し、人生で初めてガチ締めのベイトリールのドラッグを出していった、あの魚とのファイトの興奮と喜び、バラした悔しさは一生消えることはない。その魚と再会したいという一心が僕を導き、新しい釣具を創り出す日々が続いている。

lake_takayama.jpg
amazon_fishing_results.jpg

憧れの世界

アマゾンのテレスピレス川での釣りは、心に深く刻まれた大冒険だった。

昔からアクアリウム愛好者としてアマゾンの環境や釣りに憧れていた。アマゾン川に生息する熱帯魚や古代魚に夢中になり、日本では釣ることができない野性味あふれる魚たちが、アマゾンの自然の中で生息していることに今も魅了され続けている。そんな中、訪れた夢のようなチャンスが2017年、マットグロス州アルタフロレスタのアマゾン川支流、テレスピレス川での釣行。日本からドバイ経由でサンパウロ、そしてクイアバへ移動し一泊、さらにセスナで1時間、約3日の移動を経て到着したフィッシングロッヂは、赤道に近く朝6時に日が昇り12時間後の夕方6時に日が沈む理想的な環境。

水中に眼をやれば、熱帯魚ショップで見ていたようなブルーアイプレコ・タイガーショベルノーズ・コリドラス・カラシの仲間など、憧れの魚が生息している。

日本では動物園でも行かない限り出会えないような動物や鳥・昆虫たちが岸辺に屯し自然のままの姿で会うことができる。釣り人にとってこれ以上望みようのない完璧に満たされた世界。

アマゾンのブラックウォーターに生息する極彩色の魚たちとの出会いは、アマゾン川以外では味わえない特別な喜びと感動をもたらしてくれた。

未来に向かって

各地域で釣れる魚種の変化、漁獲数の激変など淡水・海水かかわらず、近年ゲームフィッシュを取り巻く環境は急速に変化し続けている。世界規模で見ればマイクロプラスティックや鉛の環境汚染問題など製品素材レベルでの進化も求められている。そんな中、ADUSTAとしても環境対応基準の製品作りを基本とし、釣人が末永く楽しめるフィールド環境の保護・保全に努めていきたい。そして常に、みなさんと同じフィールドに出向き、同じ様に苦悩し【もっとこうだったら】という素朴で身近な想いに身を寄せ、魚と対話しながら、釣りやすく、使いやすい、そして道具として使い続けられる、かっこいいルアーを創り出していきたい。

field_1.jpg
r_nakanishi_profile.jpg

R.Nakanishi Profile

奈良県出身

ホームレイク:高山ダム・室生ダム

座右の銘:温故知新・Know Thyself

​影響を受けたアーティスト:H.R.Giger

1999年9月に京都のフィッシングタックルブランドに入社。商品の企画開発・設計・デザイン・原型製作を担当。動画撮影編集・カタログ製作・写真撮影・web関連・営業も兼任。2014年に退社。

2015年より株式会社津田商会に入社。世界の釣具市場に向けてルアーフィッシング用品を展開するブランド【ADUSTA】のルアーデザイナー/フォトグラファーとして企画開発・デザイン・設計・原型製作・プロモーション活動・写真撮影・動画撮影・編集を担当。

趣味は釣り・物創り・写真撮影・アクアリウム・シルバーアクセサリー製作。

●EFTTEX 2019 BEST NEW PRODUCT AWARDSを【ZACRAWL SC】で受賞

●EFTTEX 2022 Digital Best New Product 【Runner-up】を【VARIOUS CHATTER】で受賞

●ルアー用品メーカー オフィスアクセル テスター​

bottom of page